うなぎの飼育を考えたとき、水道水はそのまま使えるのか気になりますよね。うなぎにとって快適な環境を整えるには、多くの疑問が生じるものです。
適切な水槽の準備や、最適な水温の管理も欠かせないポイントです。また、カルキ抜きに掛かる時間や、日々の餌やりはどうすれば良いのでしょうか。
うなぎの飼育は難しいと聞くと、特に稚魚からの育成は不安に感じるかもしれません。捕まえた天然うなぎの飼育方法や、突然の飛び出し事故も心配です。
さらに、うなぎの飼育期間は一体どのくらいなのかも知っておきたいところです。この記事では、そうした疑問や不安を一つひとつ丁寧に解消していきます。
- うなぎ飼育における水道水の正しい使い方
- カルキ抜きや水温管理など具体的な水作り方法
- うなぎの習性に合わせた水槽環境の整え方
- 長期飼育を成功させるための餌やりや管理のコツ
うなぎの飼育で水道水を使うための基礎知識
- うなぎ飼育に水道水はそのまま使える?
- 正しいカルキ抜き方法と必要な時間
- うなぎ飼育で重要な水温管理のポイント
- 小さな稚魚から始めるうなぎ飼育のコツ
- 捕まえた天然うなぎの飼育は可能か
うなぎ飼育に水道水はそのまま使える?
うなぎの飼育を始めるにあたり、多くの方が最初に抱く疑問は「水道水はそのまま使えるのか?」ということでしょう。
結論から言うと、水道水をそのまま飼育に使うことはできません。これは、うなぎにとって有害な物質が水道水に含まれているためです。
水道水には、私たちの飲み水を安全に保つため、殺菌作用のある塩素(カルキ)が含まれています。
人間にとっては無害な濃度ですが、水中で生活し、鰓(えら)で呼吸するうなぎにとっては、この塩素が大きな脅威となります。
塩素はうなぎのデリケートな鰓の組織や体表の粘膜を傷つけてしまいます。
これにより、うなぎは正常な呼吸が困難になったり、細菌感染への抵抗力が弱まったりするなど深刻なダメージを受ける可能性があります。
最悪の場合、命を落とすことにも繋がりかねません。
水道水をそのまま使うリスク
水道水に含まれる塩素は、うなぎの鰓呼吸を阻害し、体表の粘膜を破壊する危険性があります。飼育を始める前には、必ず後述する「カルキ抜き」という作業を行ってください。
そのため、うなぎを健康に飼育するためには、水道水からこの有害な塩素を完全に取り除く「カルキ抜き」という作業が絶対に必要不可欠です。
この一手間をかけることが、うなぎ飼育の最も基本的で重要な第一歩となります。
次の項目では、このカルキ抜きの具体的な方法について詳しく解説していきます。安全な飼育水を用意することが、うなぎとの長い付き合いの始まりです。
正しいカルキ抜き方法と必要な時間
うなぎにとって安全な飼育水を用意するため、水道水のカルキ抜きは欠かせません。
ここでは、代表的なカルキ抜きの方法と、それぞれに必要な時間の目安を具体的に解説します。ご自身の環境やスタイルに合った方法を選びましょう。
汲み置きによるカルキ抜き
最も手軽でコストがかからない方法が、バケツなどの容器に水道水を汲んで置いておく「汲み置き」です。
空気中に塩素が自然に揮発するのを利用します。日光に当てることで、より早くカルキを抜くことができます。
具体的な方法としては、口の広いバケツやタライに水道水を入れ、ベランダや庭など風通しの良い場所に置くだけです。ホコリなどが入らないように、網などで軽く蓋をしておくと良いでしょう。
時間の目安は、季節や天候、容器の口の広さによって変動します。
夏場の晴れた日であれば半日~1日、冬場や日陰であれば2~3日程度見ておくと安心です。
エアレーション(ぶくぶく)を行うと、水面が揺れて空気と触れる面積が増えるため、カルキ抜きの時間を短縮できます。
メリット:コストが一切かからない。
デメリット:時間がかかる、広い置き場所が必要になる。
中和剤(カルキ抜き剤)の使用
時間や手間をかけずにカルキ抜きをしたい場合には、市販の「中和剤(カルキ抜き剤)」を使用するのが最も効率的です。
アクアリウムショップやホームセンターなどで手軽に入手できます。
これらの製品は、塩素を瞬時に無害な物質に中和する成分(チオ硫酸ナトリウムなど)を含んでいます。
液体タイプが主流で、水道水に規定量を添加して軽くかき混ぜるだけで、すぐにカルキ抜きが完了します。
製品によって使用量が異なるため、必ずボトルの説明書をよく読み、使用する水量に合わせた正しい量を守ることが重要です。
多く入れすぎてもうなぎに良い影響はありませんので、計量カップやスポイトを使って正確に測りましょう。
メリット:即時にカルキ抜きができる、場所を取らない。
デメリット:継続的にコストがかかる、使用量を守る必要がある。
方法 | 必要な時間 | コスト | メリット | デメリット |
---|---|---|---|---|
汲み置き | 半日~3日 | 無料 | コストがかからない | 時間がかかる・場所が必要 |
中和剤 | 即時 | 有料 | すぐに使える・手軽 | コストがかかる・要計量 |
このように、どちらの方法にも一長一短があります。
急いで水換えが必要な場合や、手間を省きたい方は中和剤を、コストを抑えたい方は汲み置きを選ぶなど、状況に応じて使い分けるのが賢明です。
うなぎ飼育で重要な水温管理のポイント
うなぎは本来、日本の河川や湖沼に生息する魚であり、四季による水温の変化にある程度は適応できます。
しかし、飼育下という限られた環境では、急激な水温の変化や極端な高水温・低水温は大きなストレスとなり、体調を崩す原因になります。
うなぎが最も活発に活動し、健康を維持しやすい適正水温は、一般的に20℃から28℃の範囲と言われています。
この範囲を大きく外れる状態が長く続くと、食欲不振や消化不良、病気への抵抗力の低下などを引き起こす可能性があります。
水温管理に必須のアイテム
まず、飼育を始めるにあたって水温計は必ず設置してください。
感覚で判断するのではなく、常に正確な水温を把握することが管理の第一歩です。デジタル式やアナログ式など様々なタイプがありますが、見やすいものを選びましょう。
日本の気候では、季節に応じて水温を調整するための機器が必要になります。
- 夏場の高水温対策:室温が30℃を超える日が続くと、水槽内の水温もそれに伴い上昇します。30℃を超える高水温はうなぎにとって危険なため、冷却ファンを水面に向けて設置し、気化熱を利用して水温を下げる対策が必要です。エアコンで室温ごと管理するのも有効な方法です。
- 冬場の低水温対策:水温が15℃を下回ると、うなぎは活動が鈍くなり冬眠状態に近くなります。観賞魚として飼育し、年間を通して活動的な姿を見たい場合は、オートヒーターやサーモスタット付きのヒーターを設置して、水温を20℃以上に保つ必要があります。
水換え時の注意点
水換えの際に最も注意すべきなのが、新しい水と水槽の水の温度差です。
例えば、冷たい新しい水を一気に水槽に入れると、水温が急激に低下する「水温ショック」を引き起こし、うなぎに致命的なダメージを与えかねません。
水換えを行う際は、あらかじめ新しい水の温度を水槽の水温と合わせておくことが鉄則です。
カルキ抜きをした水をバケツに入れ、水槽の近くに数時間置いておくか、お湯を少しずつ足して温度を調整してから、ゆっくりと水槽に注ぎましょう。
このように、日々の水温をチェックし、季節に応じた対策を講じ、水換え時の温度合わせを徹底することが、うなぎを長期的に健康で飼育するための重要な鍵となります。
小さな稚魚から始めるうなぎ飼育のコツ
体長5cmほどの透明なシラスウナギや、少し成長して黒くなったクロコと呼ばれるサイズの稚魚からうなぎを育てるのは、成魚の飼育とはまた違った難しさと魅力があります。
小さな命を育てるためには、より繊細な配慮が求められます。
稚魚の入手と注意点
まず、うなぎの稚魚であるシラスウナギは、漁業権が設定されている河川での一般人の採捕が法律で厳しく禁止されている場合がほとんどです。
観賞魚店などで養殖された個体を入手するのが一般的ですが、流通量は多くありません。入手経路については事前に確認が必要です。
法律の遵守
天然のシラスウナギの採捕は、各都道府県の漁業調整規則により規制されています。違反すると罰則の対象となるため、絶対に無許可で採捕しないでください。
成魚以上にシビアな水質管理
体の小さな稚魚は、成魚に比べて体力も抵抗力もありません。そのため、水質の悪化がダイレクトに生命の危機に繋がります。
特に排泄物から発生するアンモニアは猛毒となるため、こまめな水換えが欠かせません。
飼育を始めたばかりの頃は、毎日3分の1程度の水を換えるくらいの頻度で管理するのが理想です。また、ろ過フィルターは水流の弱いスポンジフィルターなどが適しています。
通常の水中フィルターや外部フィルターを使用する場合は、吸水口にスポンジを取り付け、稚魚が吸い込まれる事故を防ぎましょう。
稚魚専用の餌と与え方
うなぎの稚魚は口が非常に小さいため、成魚用の餌は食べることができません。
ペットショップなどで販売されている、うなぎの稚魚専用の粉末状の人工飼料が必要です。これを水で練って、小さな団子状にして与えます。
餌はごく少量で十分です。食べ残しは水を急激に汚す原因になるため、与えすぎは厳禁です。数分で食べきる量を見極め、残った餌はスポイトなどですぐに取り除く習慣をつけましょう。
成長に合わせた環境の変化
稚魚は成長が早く、数ヶ月で10cmを超える大きさに育ちます。体の成長に合わせて、飼育容器を大きくしていく必要があります。
最初は小さなプラケースなどでも飼育可能ですが、成長を見越して、最終的には60cm以上の水槽が必要になることを念頭に置いておきましょう。
稚魚からの飼育は手間がかかりますが、自分の手で少しずつ大きく育てていく過程は、大きな喜びと達成感をもたらしてくれます。日々の丁寧な観察と管理が、成功への鍵です。
捕まえた天然うなぎの飼育は可能か
夏の川遊びや釣りで、うなぎを捕まえる機会があるかもしれません。自分で捕獲した天然のうなぎを飼ってみたいと考える方もいるでしょう。
天然うなぎの飼育は可能ですが、購入した個体とは異なる、特有の難しさや注意点が存在します。
採捕後の初期対応(トリートメント)
天然の個体は、捕獲されるまでの間に体に傷やスレを負っていることが少なくありません。また、自然界の細菌や寄生虫を持っている可能性も考えられます。
そのため、飼育水槽に導入する前に「トリートメント」を行うことが推奨されます。
別の容器を用意し、0.5%程度の濃度の食塩水で数日間薬浴させることで、体表の殺菌や粘膜の保護を促す効果が期待できます。
この期間はうなぎの様子をよく観察し、体力の回復を待ちましょう。
0.5%食塩水の作り方
水1リットルに対して、食塩5グラムを溶かすと約0.5%の食塩水が作れます。食塩は、ミネラルなどを含まない普通の食塩(粗塩などではない)を使用するのが一般的です。
最大の難関「餌付け」
天然うなぎの飼育で最も難しいのが「餌付け」です。自然界で生きた餌を食べてきたうなぎは、市販の人工飼料をすぐには餌として認識してくれません。根気強く慣れさせる必要があります。
まずは、うなぎが好む生きた餌(ミミズや小さな川エビ、小魚など)を与えて、飼育環境に慣れさせ、体力をつけさせます。
次に、その活き餌に人工飼料の匂いをつけたり、細かくした人工飼料を混ぜたりして、徐々に味と匂いを覚えさせていくのです。
この過程は数週間から数ヶ月かかることもあり、個体によっては最後まで人工飼料を食べない場合もあります。
餌付けが成功するかどうかが、長期飼育の大きな分かれ道となります。
法律やルールを確認
前述の稚魚と同様に、うなぎの採捕には法律や地域のルールが関わってきます。漁業権が設定されている区域での採捕や、禁漁期間、サイズの制限などが設けられている場合があります。
採捕した場所を管轄する自治体や漁業協同組合の規則を事前に確認し、ルールを必ず守るようにしてください。知らなかったでは済まされないケースもあるため、十分な注意が必要です。
天然うなぎの飼育は、その野性味あふれる姿を間近で観察できるという魅力がありますが、乗り越えるべきハードルも高いことを理解した上で挑戦することが大切です。
うなぎの飼育で水道水を安定させる環境作り
- うなぎの飼育に適した水槽の選び方
- 必須対策!うなぎの飛び出しを防ぐには
- うなぎの飼育で与える餌の種類と頻度
- うなぎの飼育期間はどれくらいが目安?
- うなぎの飼育は本当に難しいのか解説
うなぎの飼育に適した水槽の選び方
カルキ抜きをした安全な水を用意できたら、次はその水を維持し、うなぎが快適に暮らせる「住まい」である水槽を準備します。
うなぎの習性や成長を考慮した水槽選びが、長期飼育を成功させるための重要なポイントです。
成長を見越した水槽サイズ
うなぎは最終的に50cmから、大きな個体では1m近くにまで成長する魚です。飼い始めたときは小さくても、その成長は意外と早いものです。
そのため、最初から大きめの水槽を用意することを強く推奨します。最低でも幅60cm規格の水槽(60×30×36cm)は必要と考えましょう。
体が大きくなるにつれて、狭い水槽ではストレスが溜まり、運動不足にもなります。可能であれば、90cm水槽を用意すると、終生飼育も視野に入ってきます。
水槽サイズの目安
- 最低ライン:幅60cm水槽
- 推奨サイズ:幅90cm水槽以上
大きな水槽ほど水量が多いため水質が安定しやすく、管理が楽になるというメリットもあります。
水槽の素材とレイアウト
水槽の素材には主にガラスとアクリルがありますが、どちらにもメリット・デメリットがあります。
一般的には透明度が高く傷がつきにくいガラス水槽が人気ですが、大型になると非常に重くなるため、取り扱いには注意が必要です。
水槽内のレイアウトで最も重要なのが「隠れ家」です。
うなぎは非常に臆病で、物陰に隠れて落ち着く習性があります。隠れ家がないと常にストレスに晒されてしまうため、必ず設置してください。
アクアリウムショップで販売されている土管や、ホームセンターで手に入る塩ビパイプ(VP管やVU管)などが隠れ家としてよく利用されます。
うなぎが体をぴったりと収められるくらいの太さのものが落ち着くようです。体の成長に合わせて、いくつかのサイズを用意してあげると良いでしょう。
底砂は必要?
うなぎは砂に潜る習性があるため、底砂を敷いてあげるとより自然に近い環境を再現できます。
細かい砂よりも、掃除の際にプロホースなどでゴミを吸い出しやすい、少し粒の大きい大磯砂などが管理しやすいでしょう。
一方で、食べ残しやフンの掃除を徹底するために、あえて何も敷かない「ベアタンク」で管理する方法も非常に有効です。
特に飼育を始めたばかりの頃は、水の汚れ具合が分かりやすいベアタンクの方が管理しやすいかもしれません。
必須対策!うなぎの飛び出しを防ぐには
うなぎの飼育において、水質管理と並んで最も注意しなければならないのが「水槽からの飛び出し事故」です。
うなぎは驚くほどの体をくねらせる力と、ぬめりのある体表を活かして、想像もできないようなわずかな隙間からでも脱走します。
「うちのうなぎはおとなしいから大丈夫」という油断は禁物です。夜間に活動する習性があるため、飼い主が寝静まった後に事故が起きることがほとんどです。
朝起きたら、水槽の外で干からびていたという悲しい事故は、残念ながら後を絶ちません。
蓋の設置は絶対条件
うなぎの飛び出しを防ぐための最も基本的で効果的な対策は、水槽に必ず蓋をすることです。観賞魚用のガラス蓋やプラスチック製の蓋を、隙間なく設置してください。
しかし、ただ蓋を乗せるだけでは不十分な場合があります。力の強い大型の個体は、蓋を押し上げて脱走することもあるからです。
蓋の上には、レンガや水を入れたペットボトルなどの「重し」を乗せて、簡単に動かせないように工夫しましょう。
わずかな隙間も見逃さない
うなぎの脱走経路は、蓋の隙間だけではありません。以下のような箇所も徹底的にチェックし、対策を講じる必要があります。
- フィルターのパイプやホースを通す隙間:蓋の切り欠き部分は、ウールマットやスポンジを詰めて隙間を完全に塞ぎます。
- ヒーターのコードを通す穴:こちらも同様に、スポンジなどでしっかりと隙間を埋めましょう。
- コーナーカバーの隙間:フレーム付き水槽の角にあるカバーの隙間からも脱走することがあります。ここもパテなどで埋めてしまうのが確実です。
「頭さえ通れば体も通り抜けられる」のではなく「体の太さほどの隙間があれば通り抜けられる」と考えるくらい、徹底した対策が求められます。
うなぎの命を守るため、少しでも可能性がある隙間は全て塞ぐという意識を持つことが大切です。
飛び出し事故は、うなぎ飼育で最も多い失敗例の一つです。対策は「やりすぎかな?」と思うくらいがちょうど良いと心得ましょう。
愛するうなぎを悲劇から守れるのは、飼い主であるあなただけです。
うなぎの飼育で与える餌の種類と頻度
うなぎは肉食性の魚であり、自然界では小魚や甲殻類、水生昆虫など様々な生き物を食べています。
飼育下でも、その食性に合った栄養価の高い餌を与えることが、健康な体を作る上で非常に重要です。
主食となる餌の種類
飼育下で最も一般的で栄養バランスに優れているのは、市販の人工飼料です。
うなぎ専用の餌はあまり市販されていませんが、ナマズやポリプテルスといった大型肉食魚用の沈下性(水に沈むタイプ)の餌で問題なく代用できます。
人工飼料を主食としつつ、時々おやつとして以下のような餌を与えると、栄養の偏りを防ぎ、うなぎの食欲を刺激することができます。
うなぎが好む「おやつ」の例
- 冷凍アカムシ:観賞魚用の餌として定番。栄養価が高く、多くのうなぎが好んで食べます。
- 生き餌:ミミズやドジョウ、メダカ、小さなエビなど。活発に追いかけて食べる姿を観察できますが、病気を持ち込むリスクもあるため注意が必要です。
- 魚の切り身:アジやイワシなどの生魚の切り身も食べます。ただし、脂分が水を汚しやすいので、与えすぎには注意しましょう。
餌を与える頻度と量
うなぎは夜行性のため、餌を与えるのは照明を消す少し前、1日に1回が基本です。毎日決まった時間に与えることで、生活リズムが整いやすくなります。
与える量は、うなぎが2~3分で食べきれるくらいが適量です。
うなぎは食欲旺盛ですが、与えれば与えるだけ食べてしまい、消化不良や肥満の原因になります。何よりも、食べ残した餌は水質を急激に悪化させる最大の原因となります。
最初は少量から与え始め、食べきる様子を見ながら少しずつ量を調整していくのが良いでしょう。
もし食べ残しが出た場合は、面倒でもスポイトや網を使って必ず取り除くことを徹底してください。この習慣が、水質を良好に保つ秘訣です。
餌を食べないときの対処法
環境の変化や水質の悪化、水温の不一致など、うなぎが餌を食べなくなる原因は様々です。まずは飼育環境に問題がないか(水温、水質、隠れ家の有無など)を再確認しましょう。
それでも食べない場合は、嗜好性の高い冷凍アカムシや活き餌を与えて食欲を刺激してみるのも一つの手です。
数日間食べなくてもすぐに死んでしまうことはありませんので、焦らずに原因を探ることが大切です。
うなぎの飼育期間はどれくらいが目安?
うなぎの飼育を始める前に、必ず知っておいていただきたいことがあります。それは、うなぎが非常に長寿な魚であるという事実です。
犬や猫と同じように、あるいはそれ以上に長い時間を共に過ごす可能性のある生き物です。
一般的に、飼育下でのうなぎの平均寿命は10年以上と言われています。水質や水温、餌などの飼育環境が安定していれば、20年、30年と生きることも決して珍しくありません。
過去には、80年以上生きたという記録も残っているほどです。
「飼育期間」という考え方
このため、「うなぎの飼育期間はどれくらいが目安?」という問いに対する答えは、「飼い主の覚悟次第で、数十年単位になる」となります。
夏の間に捕まえたから少しだけ飼ってみる、というような軽い気持ちで飼育を始めるべき生き物ではないのです。
飼育を始めるということは、そのうなぎの一生に責任を持つということです。
ご自身のライフプラン(進学、就職、結婚、転居など)を考慮した上で、長期にわたる飼育が可能かどうかを真剣に考える必要があります。
安易な放流は絶対にNG
もし飼育が困難になった場合でも、飼っていたうなぎを近所の川などに放流することは絶対にやめてください。
飼育個体は、その地域の生態系に存在しなかった病気を持ち込んだり、遺伝子を交雑させたりして、自然環境に深刻な悪影響を与える「遺伝子汚染」を引き起こす原因となります。
飼育を始める前に、最後まで責任を持って飼い続ける覚悟を持つことが、飼い主としての最低限のマナーです。
成長の過程を楽しむ
うなぎは、日々の世話に応えて少しずつ大きくなっていきます。
最初は割り箸ほどの太さだった個体が、数年後には腕のような太さにまで成長する姿を間近で見られるのは、長期飼育ならではの醍醐味です。
ゆっくりと時間をかけて築かれるうなぎとの関係は、他のペットでは味わえない独特の魅力があります。この長い付き合いを楽しめるかどうか、飼育を始める前によく考えてみてください。
うなぎの飼育は本当に難しいのか解説
「うなぎの飼育は難しい」という声をよく耳にしますが、これは本当なのでしょうか。
結論から言うと、他の一般的な観賞魚と比較すると、いくつかの点で難易度が高いのは事実です。
しかし、その「難しさ」のポイントを正しく理解し、対策を講じれば、初心者でも飼育を楽しむことは十分に可能です。
ここでは、うなぎ飼育が難しいと言われる主な理由と、それを乗り越えるためのコツを解説します。
理由1:水質の管理がシビア
うなぎは肉食性でよく食べ、その分フンも多くします。そのため、水を汚すスピードが非常に速いのです。
特に、フンや食べ残しから発生する有毒なアンモニアや亜硝酸が蓄積しやすく、これが病気や突然死の最大の原因となります。
【乗り越えるコツ】
強力なろ過フィルター(上部フィルターや外部フィルターなど)を設置し、定期的な水換え(週に1回、3分の1程度)を怠らないことが重要です。
食べ残しをすぐ取り除く習慣も、水質維持に直結します。
理由2:脱走(飛び出し)の名人であること
前述の通り、うなぎは信じられないほどの脱走能力を持っています。
ほんのわずかな隙間も見逃さず、体を巧みに使って水槽の外へ出てしまいます。この対策を甘く見ていると、ほぼ確実に悲劇が起こります。
【乗り越えるコツ】
水槽の蓋と重しは絶対条件です。さらに、フィルターのパイプやコードの隙間をスポンジなどで物理的に完全に塞ぐなど「やりすぎ」なくらいの徹底した対策が必要です。
理由3:長期飼育が前提となること
うなぎは10年以上生きる長寿な魚です。飼育を始めるには、自身のライフスタイルの変化を見据えた上で、最後までお世話をするという長期的な覚悟が求められます。
この責任の重さが、一種の「難しさ」と言えるでしょう。
【乗り越えるコツ】
飼育を始める前に、うなぎの寿命について正しく理解し、家族の同意を得るなど、長期的な視点で受け入れ態勢を整えることが大切です。
うなぎ飼育の難しさは、その生態や習性に起因するものです。
逆に言えば、「水質管理」「飛び出し対策」「長期飼育の覚悟」という3つのポイントをしっかりと押さえれば、飼育のハードルは大きく下がります。
日々の観察を怠らず、愛情を持って接すれば、きっと素晴らしいペットになってくれるでしょう。
まとめ:うなぎの飼育は水道水の管理から
この記事では、うなぎの飼育における水道水の使い方から具体的な飼育環境の構築、そして長期飼育を成功させるためのコツまで、幅広く解説してきました。
最後に、本記事の重要なポイントをリストで振り返ってみましょう。
- うなぎの飼育に水道水をそのまま使うのは厳禁
- 飼育水は必ずカルキ抜きを行う
- カルキ抜きは汲み置きか中和剤を使用する
- うなぎの適正水温は20℃から28℃の範囲
- 水温管理には水温計とヒーターやファンが必須
- 水換え時は水温を合わせることが重要
- 稚魚の飼育は水質管理と餌やりに特に注意する
- 天然うなぎの飼育は餌付けが最大の難関
- 水槽は成長を見越して60cm以上のサイズを選ぶ
- 臆病なうなぎのために隠れ家は必ず設置する
- 飛び出し対策として蓋と重しは絶対に必要
- わずかな隙間もスポンジなどで徹底的に塞ぐ
- 餌は肉食魚用の人工飼料を1日1回与える
- 食べ残しは水質悪化を防ぐため必ず取り除く
- うなぎは10年以上生きる長寿な魚であることを理解する
- 安易な放流は生態系破壊に繋がるため絶対に行わない
うなぎ飼育の全ては、安全な水を用意することから始まります。
正しい知識を持って丁寧に管理すれば、うなぎは飼い主によく慣れ、そのユニークな魅力で日々の生活に潤いを与えてくれるはずです。
この記事が、あなたのうなぎ飼育の第一歩をサポートできれば幸いです。
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