襖紙の種類と特徴を解説|選び方で変わる和室の印象

襖紙の種類と特徴を解説|選び方で変わる和室の印象 暮らし

和室の雰囲気は、襖紙ひとつでがらりと変わります。しかし、種類や等級が多くて迷われる方も多いのではないでしょうか。以下のお悩みはありませんか?

  • 和紙・ビニール・織物の違いを、暮らし目線で知りたい  
  • 鳥の子紙の等級や価格帯の目安がわからない  
  • DIYで貼るときののりや手順、注意点を把握したい

本記事は、主要素材ごとの見た目・機能・耐久性を整理し、柄の選び方、等級と価格の目安、のりと施工のコツまで徹底的に解説します。読後は、自分の和室に似合うものを無理なく選べるようになるでしょう。

襖紙の種類とは?基礎と構造をおさえる

襖紙(ふすま紙)は、襖に貼る仕上げ材の総称です。紙だけでなく、ビニールや織物も実務上は襖紙と呼びます。まずは構造と役割を押さえると、選択がぐっと楽になります。

  • 襖の基本構造  

  骨(木枠)に下貼り(下地)を重ね、最後に上貼り(見える襖紙)で仕上げます。下貼りには、うらばり紙や雲華紙(うんかし)を使い、湿度の調整や上貼りの密着を助けます。用途や建具の種類で厚みや工程が変わります。

  • 上貼りに使う襖紙の主な種類  

  1. 和紙系(鳥の子紙、本鳥の子、新鳥の子、越前和紙、江戸からかみなど)  

  2. ビニールふすま紙  

  3. 織物襖紙(レーヨン、スフ糸、麻、絹、木綿など)

  • 仕上げとデザイン  

  無地、総柄、四枚柄、六枚柄などがあり、印刷や装飾のバリエーションが豊富で、引手や縁との相性で印象が大きく変わります。

襖紙|種類を素材別に比較(機能・見た目・耐久性)

襖紙選びの核心は素材です。和紙・ビニール・織物を、使い勝手と見た目の両面から比べていきます。

和紙(鳥の子紙/本鳥の子・新鳥の子・越前和紙・江戸からかみ)

和紙は湿度をゆるやかに調整し、やわらかな光沢が魅力です。中でも鳥の子紙は襖の定番となっています。紙料と製法で質が変わります。

用語と等級の目安

  • 本鳥の子  

  雁皮・三椏・マニラ麻などの天然繊維を多く用いた手すき中心で、上級~最高級、質感・色持ち・耐久性に優れています。  

  • 新鳥の子  

  パルプ主体の機械すきが中心で、普及~中級、価格と見た目のバランスが良く、住居全般で使いやすいです。  

  • 越前和紙・江戸からかみ  

  産地や技法に由来するデザイン性が特長です。版木や装飾の美しさで、和モダンの空間にも合います。

機能と見た目

和紙は微細な繊維が光をやわらげ、無地でも上質に映ります。印刷や装飾の組み合わせも多く、四枚柄や六枚柄の大柄でも品良くまとまります。

耐久性と加工性

手すき和紙は繊維が長くコシがあり、破れにくく補修しやすいのが強みです。再湿のりや切手のりとの相性が良く、のり付き(再湿のり襖紙)なら作業効率も上がります。

デメリット・注意点

水拭きに弱く、キッチン近くや小さなお子さま・ペットがいる環境では汚れ対策が必要です。直射日光が強い場所は、カーテンやUV対策で色焼けを抑えましょう。  

ビニールふすま紙(機能性重視の選択)

ビニールは表面強度が高く、日常の手入れが簡単です。賃貸や子育て世帯、店舗のバックヤードに向いています。

  • 機能  

  水拭き可能で、油汚れや手垢が落としやすいタイプが多いです。抗菌・消臭などの機能を備えたシリーズも選べます。  

  • 見た目  

  繊維感は控えめですが、マット仕上げや雲肌風のエンボスなど、和空間になじむデザインが増えています。

  • 耐久性と加工性  

  擦れや引っかきに強く、普及品でも実用性は十分です。貼る際は伸縮を見込み、のりの量を均一にするのがコツです。

織物襖紙(レーヨン・スフ糸・麻・絹・木綿)

糸を織った上貼り材で、織組織による陰影と奥行きが魅力です。

  • 素材の違い  

  レーヨンやスフ糸は扱いやすく中級~上級の主力になります。麻や絹などの天然素材は表情が豊かで、最高級に使われます。

  • 見た目とデザイン性

  無地でも織りの表情が出て、四枚柄・六枚柄の大柄でも重厚に仕上がります。箔や盛り上げの装飾とも好相性です。  

  • 耐久性  

  引張りや摩耗に強い傾向にあります。押入れなど暗所でも風合いを損ねにくい一方、汚れが繊維間に入ると落ちにくいので日常は乾拭きが安心です。

襖紙|等級・グレードと価格の目安

気になる予算は、等級の考え方を知ると見通しが立ちます。呼び方はメーカーで異なりますが、考え方は共通です。

普及品・中級品・上級品・最高級品の違い

  • 普及品  

  新鳥の子やビニールが中心で柄数が多く、DIYや賃貸で選ばれやすい価格帯です。  

  • 中級品  

  新鳥の子の厚手やデザイン性の高い織物、機能性ビニールが主力で、居間や客間に使いやすいです。  

  • 上級品  

  手すき和紙や上質な織物、越前和紙や江戸からかみなどです。素材感とデザインが一段と上質になります。  

  • 最高級品  

  本鳥の子や絹・麻の織物、手仕事の装飾・版木摺りです。格式が求められる本襖に適します。

※価格は地域や施工内容で変わります。

丈長・幅広などサイズと規格

和室の寸法や丈長や幅広の要否を確認しましょう。背の高い建具や古建具は特注幅が必要な場合があります。四枚柄・六枚柄などの大柄は割付が重要で、引手や縁、骨の見付け寸法も仕上がりを左右します。

襖紙|柄・デザインと印刷・装飾

柄は和室の主役です。空間の役割に合わせて選ぶと、まとまりが良くなります。

無地・総柄・四枚柄・六枚柄の違い

  • 無地  

  光の回り方と素材感が大事です。和紙は繊維感、織物は織り目の陰影が映えます。  

  • 総柄  

  1枚で完結する柄になっていて貼り替えが容易です。押入れや戸襖にも合わせやすいです。  

  • 四枚柄・六枚柄  

  大柄が続くデザインになっていて、客間や床の間の主景に向き、中心線の通し方がポイントです。幾何柄の和モダンも人気です。

印刷・グラビア印刷と装飾の見え方

多くはグラビア印刷で、繊細な濃淡表現が可能です。箔や盛り上げなどの装飾を重ねると陰影が深まり、照明で表情が変わります。和紙×加飾は上品、織物×装飾は重厚、ビニール×印刷は手入れが容易と覚えておくと選びやすいです。

襖紙|のりと施工方法(DIYとプロの違い)

仕上がりを決めるのは、のりと下地です。DIYでもコツを押さえればきれいに貼れます。

再湿のり・再湿のり襖紙・切手のりの違い

  • 再湿のり  

  乾燥後に水で再活性します。作業が早く、ムラになりにくい特長があります。  

  • 再湿のり襖紙(のり付き)  

  裏面にのりが加工済みになっていて霧吹きで均一に湿らせて貼ります。裏面表示を確認し、貼る向きを間違えないことが大切です。  

  • 切手のり  

  小さな補修や端部処理に便利です。全面貼りには不向きです。

下貼りと上貼りの手順(DIY)

  • 必要工具  

  刷毛、ローラー、地ベラ、竹べら、撫で刷毛、定規、カッター、霧吹き、スポンジなど。  

  • 流れ  

  1. 古い上貼りを剥がし、下貼り(うらばり紙・雲花紙)の状態を確認  

  2. 必要に応じて下貼りを補修・増し貼り  

  3. 上貼りを裁断し、柄の通りを仮合わせ  

  4. のり塗布または再湿処理  

  5. 貼り付け、中心から外へ空気を抜き、端部を地ベラで押さえる  

  6. 周囲をカットして見付けを整え、引手穴をくり抜く  

  7. 乾燥し、反り防止のため裏表の作業バランスに配慮

施工のコツと注意点

  • 丈長・幅広は伸びを見込み、寸法に5~10mmの余裕をとる  
  • 四枚柄・六枚柄は中心線を先に揃える  
  • ビニールは室温とのり量に注意し、伸縮を抑える  
  • 乾燥時の強風や片面だけの急乾燥は避ける

襖紙|用途別の選び方

暮らし方に合わせて、素材・柄・機能を組み合わせましょう。

家族で暮らすリビング横の和室

  • 汚れやすい→ビニールふすま紙(抗菌・消臭)や新鳥の子の機能タイプ  
  • デザイン→総柄や和モダンの無地。引手はシンプルな金物が好相性

来客を迎える客間・床の間

  • 本襖×本鳥の子や手すき和紙で格調を演出。四枚柄・六枚柄が効果的  
  • 織物襖紙で光沢を抑えた上質感。引手・縁は天然木や真鍮で統一

押入れや納戸

  • 暗所での安定性→織物襖紙や普及品の新鳥の子  
  • 片面だけの貼り替え時も、同柄に配慮

賃貸や店舗バックヤード

  • 施工性・コスト重視→普及品のビニールふすま紙  
  • のり付き(再湿のり襖紙)で工期短縮と安定施工

よくある疑問とチェックリスト

メンテナンスの方法は?

  • 和紙:乾拭きが基本。汚れは練り消しゴムで軽く。水拭きは避ける  
  • ビニール:中性洗剤で水拭き可。強くこすらない  
  • 織物:やわらかいブラシで埃取り。染みは早めにプロへ相談

見本帳・カタログの見方

  • 等級(普及~最高級)と紙料(雁皮・三椏・パルプ)  
  • 印刷・グラビア印刷・装飾の有無  
  • 丈長・幅広の規格、反物か定尺か  
  • のり付き(再湿のり襖紙)か無加工か

プロに頼むかDIYか(費用・仕上がりの比較)

  • プロ施工のメリット  

  下地調整から柄合わせ、引手の再取付まで一貫対応してくれます。四枚柄・六枚柄や本襖はプロが安心です。  

  • DIYのメリット  

  予算を抑えやすく、普及~中級の総柄や無地なら十分可能です。のり付き(再湿のり襖紙)で工数を短縮できます。  

  • 費用感の目安  

  地域差はありますが、普及品の貼り替えで1枚数千円台~です。上級・最高級や織物・本鳥の子は1枚1万円台~のこともあります。見積りは複数社で比較しましょう。

まとめ

襖紙の選び方は、暮らし方と空間の役割で答えが変わります。日々の手入れを優先するならビニール、素材の表情を楽しむなら和紙、なかでも本鳥の子は一押しです。格式や陰影を深めたいときは織物襖紙が頼りになります。等級は紙料と製法に直結し、価格だけでなくデザイン性と耐久性のバランスを見ることが大切です。DIYはのり付きと基本手順で安定し、プロは下地と柄合わせまで安心して依頼できます。見本帳で質感を確かめ、引手や縁との相性まで考えれば、和室の印象は一気に変わるでしょう。

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