生活保護は、病気や失業などで生活に困ったときのいざというときに頼れる最後のセーフティネットです。
この記事では、生活保護を受けられる具体的な条件や手続きの流れ、状況別の判断基準などを分かりやすく解説します。

病気で収入が不安定だけど、私でも生活保護の対象になるのかな?

生活保護は様々な状況の方が対象になりえます。まずは条件を確認してみましょう
- 生活保護を受けられる基本的な5つの条件
- 病気・持ち家・借金など状況別の判断ポイント
- 相談から申請、受給決定までの手続きの流れ
- 生活保護以外に利用できる可能性のある公的制度
生活保護制度の基本概要
生活保護制度を理解する上で、その根本的な考え方と目的を把握することが重要です。
この見出しでは、生活保護が保障する「最低限度の生活」とは具体的にどのようなものか、制度が目指す「自立支援」の考え方、そして地域によって異なる「最低生活費の計算方法」について解説します。
これらの基本を理解することで、生活保護制度がどのような状況にある人々を支える仕組みなのかが見えてきます。
国が保障する最低限度の生活とは
生活保護法で定められている「最低限度の生活」とは、単に衣食住が満たされているだけでなく、「健康で文化的な生活水準を維持することができる」状態を指します。
(生活保護法第一条)これは日本国憲法第25条の生存権の理念に基づいており、国民が人間らしい生活を送るための最低ラインを国が保障するという考え方です。
具体的には、食費、住居費、医療費、教育費など、生活に必要な費用を総合的に考慮します。

「健康で文化的」って、具体的にはどんなレベルなの?

贅沢はできませんが、社会の一員として必要な交流や最低限の教養・娯楽も含まれると考えられています
つまり、生命を維持するだけでなく、人としての尊厳を保ちながら生活できる水準を保障することが、この制度の基本的な考え方なのです。
制度の目的と自立支援の考え方
生活保護制度の目的は、生活困窮者に対する一時的な救済だけでなく、その人の自立を助長することにあります。
(生活保護法第一条)これは、保護を受ける人が自身の能力を最大限に活用し、再び自分の力で生活できるようになることを最終的な目標としているためです。
例えば、働ける状態にある人には、ハローワークでの求職活動や就労支援プログラムへの参加が促されます。
支援の種類 | 内容例 |
---|---|
生活扶助 | 食費、光熱水費などの日常の生活費 |
住宅扶助 | 家賃、地代などの住居費 |
医療扶助 | 病気やけがの治療費(自己負担なし) |
教育扶助 | 義務教育に必要な学用品費、給食費など |
就労支援 | 技能習得費、就職活動費、就職支度費など |
生業扶助 | 事業開始資金、技能習得費用など |

病気で今は働けないけど、将来的にまた働きたい…サポートはある?

はい、体調に合わせて無理のない範囲での就労準備支援や、技能習得のサポートなど、自立に向けた様々な支援が用意されています
生活保護は、単にお金を支給するだけでなく、保護を受ける人が社会的なつながりを保ち、再び自立した生活を送れるように多角的に支援する制度といえます。
最低生活費の計算方法と地域差
生活保護で支給される金額の基準となる「最低生活費」は、国が定めた計算方法に基づいて算出されます。
この計算は、世帯員の年齢、人数、健康状態、そしてお住まいの地域などを考慮して行われます。
特に地域による物価や家賃水準の違いを反映するため、「級地制度」が用いられており、例えば東京都区部などの1級地は地方の3級地よりも高く設定されています。
2023年度の単身世帯(勤労収入なし、家賃除く)の例では、東京23区(1級地-1)で約8万円、地方郡部(3級地-2)で約6.5万円が目安となります(具体的な金額は年度や世帯状況で変動します)。
項目 | 説明 |
---|---|
生活扶助基準 | 年齢や世帯構成に応じて算出される食費や光熱水費など |
級地制度 | 地域の物価水準に応じて6区分に分けられ、基準額が異なる |
各種加算 | 障害、介護、母子世帯など、特定の事情がある場合に加算される |
収入認定額 | 稼働収入、年金、手当など、世帯の収入として計算される額 |
保護費 | (最低生活費) – (収入認定額) = 支給される生活保護費(原則) |

私の住んでいる地域だと、いくらくらいもらえる可能性があるんだろう?

正確な金額は福祉事務所での計算が必要ですが、お住まいの地域の級地を確認すると大まかな目安がわかります
最低生活費は、このように個々の世帯の状況や地域の実情に合わせて細かく計算されるため、一律の金額ではないことを理解しておくことが大切です。
生活保護受給の5つの主要条件
- 条件1: 世帯収入が最低生活費未満
- 条件2: 活用できる資産(預貯金・不動産・車など)の制限
- 条件3: 働く能力の活用と就労支援
- 条件4: 扶養義務者(親族)からの援助の優先
- 条件5: 他の公的制度(年金・手当など)の活用
生活保護を受けるためには、いくつかの条件を満たす必要があります。
中でも、あなたの世帯全体の収入が国が定める基準を下回っているかどうかが最も基本的な判断基準となります。
収入の他にも、活用できる資産がないか、働く能力を活かせているか、親族からの援助は得られないか、利用できる他の公的制度はないか、といった点が総合的に審査されます。
これらの条件について、一つずつ詳しく見ていきましょう。
条件1: 世帯収入が最低生活費未満
生活保護を申請する上で基本となるのが、「最低生活費」という基準です。
これは、国が定める「健康で文化的な最低限度の生活」を送るために必要とされる費用のことで、お住まいの地域や世帯の人数、年齢構成などによって金額が変わります。
あなたの世帯(一人暮らしであればあなた自身)の収入をすべて合計した金額が、この最低生活費に満たない場合に、生活保護の対象となる可能性があります。
収入には、働いて得た給料だけでなく、年金や各種手当、親族からの仕送りなども含まれるため注意が必要です。
収入とみなされるものの例 | 収入とみなされないものの例(一部) |
---|---|
就労収入(給与、賞与など) | 臨時的な収入(祝い金、見舞金など) |
事業収入(自営業など) | 経費として認められるもの |
年金(老齢、障害、遺族など) | 福祉的な給付金(一部) |
雇用保険(失業手当) | — |
各種手当(児童手当、児童扶養手当など) | — |
親族からの仕送り | — |
財産収入(家賃収入、利子など) | — |

私の給料は少ないけど、手当ても合わせるとどうなるの?

収入は給与だけでなく、年金や各種手当、仕送りなども合計して判断されますよ
世帯の収入合計額が最低生活費を下回る場合に、その不足分が保護費として支給される仕組みです。
条件2: 活用できる資産(預貯金・不動産・車など)の制限
生活保護を申請する際には、活用できる「資産」は原則として生活費に充てることが求められます。
これは、まずご自身の持っているものを最大限活用して生活を維持するという考え方に基づきます。
預貯金については、おおむね最低生活費の半分程度の額までであれば、保有が認められる場合があります。
持ち家に住んでいる場合、資産価値が高すぎなければ、住み続けることが認められるケースが多いです。
また、車も、通勤や通院、障がいのある家族の送迎など、生活に必要不可欠と判断されれば保有が認められる可能性があります。
ただし、高級車などは売却して生活費に充てるよう指導される場合もあります。
資産の種類 | 原則 | 保有が認められるケース(例) |
---|---|---|
預貯金・現金 | 生活費に充当 | 最低生活費の半分程度まで |
土地・家屋(持ち家) | 売却して生活費に | 居住中で資産価値が低い場合 |
自動車 | 売却して生活費に | 通勤・通院・事業・障がい者の送迎など、生活維持に不可欠な場合 |
生命保険 | 解約して返戻金を生活費に | 保険料が低額で、解約返戻金が少ない場合 |
貴金属・有価証券など | 売却して生活費に | — |

少しだけ貯金があるんだけど、ダメなのかな?車がないと通院できないんだけど…

生活に必要な範囲での資産保有は認められる場合があるので、窓口で相談しましょう
どの程度の資産まで保有が認められるかは、個々の状況によって判断が異なりますので、福祉事務所に正直に相談することが大切です。
条件3: 働く能力の活用と就労支援
生活保護は、働く能力があるにも関わらず、働く意欲がない方を支援する制度ではありません。
そのため、働くことが可能な方は、その能力に応じて就労し、収入を得る努力をすることが求められます。
もちろん、病気やケガ、障がい(うつ病などの精神疾患を含む)、あるいはご家族の介護などで、働きたくても働けない状況にある場合は別です。
そのような場合は、医師の診断書などを提出することで、働くことが困難であると判断されます。
働ける状態にも関わらず、特別な理由なく就職活動をしない場合、生活保護の受給は難しくなります。
福祉事務所では、ハローワークと連携して仕事探しを支援する体制も整っています。
働けない・働くことが困難と判断される理由(例) | 必要な対応(例) |
---|---|
病気・ケガ | 医師の診断書提出、治療への専念 |
障がい(身体・知的・精神) | 障害者手帳、医師の診断書提出 |
高齢 | 年齢による判断 |
家族の介護・看護 | 介護・看護の必要性を示す書類など |
母子・父子家庭で育児に専念する必要がある | 子どもの年齢などを考慮 |

持病があって思うように働けないんだけど、どう説明すればいいの?

医師の診断書など、働けない状況を客観的に示す書類があると伝わりやすいですよ
現在働けない状況であっても、将来的に働けるようになるための就労支援を受けるなど、自立に向けた意欲を示すことが重要になります。
条件4: 扶養義務者(親族)からの援助の優先
生活保護を申請すると、原則として「扶養義務者」である親族(親、子、兄弟姉妹、配偶者など)に対して、福祉事務所から援助が可能かどうかを確認する連絡(扶養照会)が行われます。
これは、民法上の扶養義務に基づき、可能な範囲で親族間の助け合いを優先するという考え方があるためです。
ただし、扶養義務者自身も生活に困窮している場合や、長期間連絡を取っていない、あるいはDV(ドメスティック・バイオレンス)や虐待などの経緯があって連絡を取るのが適切でないと判断される場合は、扶養照会を行わない、または援助を求めないといった配慮がなされます。
援助が期待できない特別な事情がある場合は、正直に伝えることが大切です。
扶養義務の範囲(主な例) | 扶養照会が行われない・援助が求められないケース(例) |
---|---|
配偶者 | DVや虐待の経緯がある場合 |
親・子 | 長期間(例: 10年以上)音信不通の場合 |
兄弟姉妹 | 扶養義務者が高齢者、障がい者、長期入院中、未成年者などの場合 |
(状況により)祖父母・孫 | 扶養義務者自身が生活保護受給中や住民税非課税世帯の場合 |
(状況により)3親等内の親族 | 援助によって自身の生活が困窮する場合 |

親には頼りたくないし、迷惑かけたくないんだけど…

援助が難しい事情がある場合は、正直に相談することが大切です
扶養義務者からの援助が得られないと判断された場合に、この条件は満たされることになります。
条件5: 他の公的制度(年金・手当など)の活用
生活保護は「最後のセーフティネット」と呼ばれるように、利用できる他の公的な制度がある場合は、そちらを優先して活用することが求められます。
これを「補足性の原理」といいます。
例えば、年金(老齢年金、障害年金、遺族年金など)や、失業した場合の雇用保険(失業手当)、ひとり親家庭向けの児童扶養手当、住む場所に困った際の住居確保給付金、病気やケガで働けない場合の傷病手当金(健康保険加入者)などが挙げられます。
これらの制度を活用してもなお、生活費が最低生活費に満たない場合に、生活保護の利用が検討されるのです。
生活保護の申請前に活用を検討すべき主な公的制度(例) | 対象となる可能性のある方(例) |
---|---|
年金(老齢・障害・遺族) | 高齢者、障がいのある方、配偶者を亡くされた方 |
雇用保険(失業手当) | 失業された方 |
児童手当・児童扶養手当 | 子育て中の世帯、ひとり親世帯 |
住居確保給付金 | 離職等により住居を失うおそれのある方 |
傷病手当金 | 健康保険加入者で病気やケガで働けない方 |
各種医療費助成制度 | 医療費の負担が大きい方(障がい、難病、ひとり親など) |
緊急小口資金・総合支援資金(生活福祉資金貸付制度) | 一時的に生活費が必要な方 |

生活保護以外にも使える制度があるの?

利用できる制度は状況によって様々なので、窓口で一緒に確認してもらえますよ
自分がどの制度を利用できるか分からない場合でも、福祉事務所の窓口で相談すれば、利用可能な制度について教えてもらえます。
状況別の条件判断と注意点
生活保護の条件は一律ではなく、個々の状況に応じて判断される点が重要です。
特に申請者それぞれの事情が、審査においてどのように考慮されるかを理解しておく必要があります。
このセクションでは、病気や障害(うつ病含む)を抱えている場合、持ち家やローンがある場合、年齢や家族構成(独身・母子家庭など)、働ける状態でも仕事が見つからない場合、そして借金がある場合といった、よくある状況別に条件判断のポイントと注意点を具体的に解説していきます。
ご自身の状況に近いケースを参考に、生活保護の利用可能性について理解を深めていきましょう。
病気や障害(うつ病含む)がある場合の判断基準
生活保護の申請において、病気や障害(うつ病などの精神疾患を含む)によって、どの程度働くことが難しいかは、受給の可否を判断するうえで非常に重要な要素となります。
医師の診断書や意見書の内容が重視され、どの程度就労が制限されるかが具体的に評価されます。
例えば、治療への専念が必要で、現時点では全く働けないと判断されれば、収入に関する条件を満たしやすくなります。
一方で、短時間勤務や特定の軽作業であれば可能と判断された場合は、その能力に応じた就労に向けた支援や指導が行われることがあります。

持病があるけど、診断書があれば必ず受給できるの?

診断書は重要な判断材料の一つですが、それだけで受給が決定するわけではありません。収入や資産など、他の条件も含めて総合的に判断されます。
病状やそれによる就労能力の評価は一人ひとり異なります。
まずは福祉事務所に相談し、医師の診断書を準備して判断を仰ぐことが大切です。
持ち家やローンがある場合の資産評価
生活保護制度では、活用できる資産があれば、それをまず生活費に充てることが原則とされています。
持ち家(居住用の不動産)の扱いについては、原則として売却が求められますが、例外的に保有が認められるケースもあります。
原則として、資産価値が高い持ち家は売却して生活費に充当するよう指導されます。
しかし、その持ち家の資産価値が低い場合や、売却してしまうと住む場所がなくなり、かえって家賃負担が増えてしまう場合、あるいは高齢の方や障害のある方が住んでいて、転居が現実的に困難な場合などは、例外的にそのまま住み続けることが認められる可能性が高いです。
ただし、住宅ローンが残っている場合は、状況がより複雑になります。

ローンが残っている家はどうなるんだろう?

生活保護費をローンの返済に充てることは原則として認められていません。そのため、売却や任意整理、場合によっては自己破産などの債務整理手続きを検討する必要が出てくることがあります。
状況 | 原則的な扱い | 例外的な保有容認の可能性 | 注意点 |
---|---|---|---|
ローン完済済の持ち家 | 売却して活用 | 資産価値が極めて低い、転居困難など | 自治体の定める評価基準を確認する必要あり |
ローン返済中の持ち家 | 売却等で対応 | 原則として保有継続は困難 | 保護費からのローン返済不可、専門家への相談推奨 |
賃貸住宅(持ち家でない) | – | 住宅扶助の対象となる可能性あり | 地域ごとに定められた家賃額の上限あり |
持ち家やローンの有無、その状況は資産評価に大きく関わるため、福祉事務所には必ず正確な情報を伝えて、どのように対応すべきか相談しましょう。
年齢や家族構成(独身・母子家庭など)の影響
生活保護の条件として特定の年齢制限は設けられていません。
しかし、申請者の年齢や家族構成(世帯の状況)は、必要とされる最低生活費の計算や、働く能力の評価、扶養義務者の有無の確認などに影響を与えます。
具体的には、65歳以上の高齢者で働くことが難しい場合や、未就学児など小さなお子さんを一人で育てている母子家庭(または父子家庭)で、育児のために十分な収入を得ることが難しい場合などは、生活保護の必要性が高いと判断されやすい傾向があります。
もちろん、独身(一人暮らし)の方であっても、病気や失業などにより生活に困窮し、他の条件を満たせば受給対象となります。

一人暮らしだと、受給は不利になる?

一人暮らしであること自体が、生活保護の審査で不利になることはありません。あくまで個々の収入、資産、健康状態、就労能力などが総合的に判断されます。
どのような年齢や家族構成であっても、生活に困窮している場合は、福祉事務所に相談する権利があります。
ご自身の状況を正直に伝えることが大切です。
働ける状態でも仕事が見つからない場合
生活保護は、働く能力があるにも関わらず、働く意思がないと判断されると受給することはできません。
しかし、「働ける状態」であっても、仕事がなかなか見つからないというケースは考慮されます。
ハローワーク(公共職業安定所)などを利用して積極的に求職活動を行っているにも関わらず、現実的に適切な仕事が見つからない場合は、働く意思があると認められます。
例えば、希望する職種の求人がない、ご自身の年齢や持っているスキル、あるいは健康状態に合う求人が見当たらないといった具体的な状況が考えられます。
福祉事務所は、こうした求職活動の状況を定期的に面談などで確認し、必要に応じて就労に向けた支援を行います。

求職活動はしているけど、なかなか決まらない場合は?

積極的に求職活動を継続していることを示すことが重要です。すぐに保護が打ち切られるわけではありませんので、福祉事務所の就労支援も活用しながら活動を続けましょう。
仕事が見つからない状況が続いていても、求職活動を誠実に行っている限り、生活保護の受給が認められる可能性は十分にあります。
諦めずに福祉事務所との連携を保ち、相談を続けることが重要です。
借金がある場合の扱いと対処法
生活保護費を借金の返済に充てることは、原則として認められていません。
生活保護制度は、あくまで健康で文化的な最低限度の生活を保障することを目的としており、個人の債務を整理するための制度ではないためです。
もし多額の借金を抱えている場合は、生活保護を申請する前、あるいは申請と並行して、法テラス(日本司法支援センター)や弁護士、司法書士といった法律の専門家に相談し、自己破産や任意整理などの債務整理手続きを進めることが一般的です。
借金があること自体が、直ちに生活保護を受けられない理由にはなりませんが、なぜ借金があり、今後どのように返済していく(あるいは整理していく)のかについて、福祉事務所にきちんと説明する必要があります。

借金があると生活保護は受けられないの?

借金があっても生活保護の申請自体は可能です。しかし、保護費を返済に使うことはできないため、多くの場合、債務整理の手続きが必要となります。
借金の問題と生活保護の利用は、それぞれ分けて考える必要があります。
まずは借金問題の解決に向けて、法テラスなどの専門機関へ相談してみることをおすすめします。
生活保護の相談と申請手続き
生活保護の利用を考え始めたとき、まずはお住まいの地域の福祉事務所へ相談することが第一歩です。
福祉事務所の役割から、申請前の準備、審査内容、そして受給が始まった後の生活上のルールまで、生活保護の相談から受給決定、その後の流れを順に確認していきましょう。
一人で悩まず、専門家のサポートを得ることが大切になります。
相談窓口となる福祉事務所の役割
福祉事務所は、生活保護に関する相談や申請を受け付ける公的な窓口です。
生活に困窮している方の状況を丁寧に聞き取り、生活保護制度の内容や利用できる他の公的支援制度について説明を行います。
専門の職員であるケースワーカーが、申請手続きのサポートから受給中の生活相談、自立に向けた支援まで、継続的に関わってくれる点も重要な役割といえるでしょう。

福祉事務所って、どんなことをしてくれるの?

生活保護だけでなく、あなたの状況に合わせて利用できる他の制度も教えてくれますよ
福祉事務所に相談することで、ご自身の状況を客観的に把握し、必要な支援につながる道筋が見えてきます。
申請前の準備と相談の流れ
福祉事務所へ相談に行く前に、ご自身の生活状況や収入、資産に関する情報を整理し、関連する書類を準備しておくと、相談がスムーズに進みます。
具体的には、給与明細や年金通知書、預貯金通帳、賃貸契約書、医療費の領収書などを手元に用意し、相談したいことや疑問点をメモにまとめておくことをお勧めします。
準備しておくとよいもの | 具体例 |
---|---|
収入に関する書類 | 給与明細、年金証書、児童扶養手当証書など |
資産に関する書類 | 預貯金通帳、生命保険証券、不動産登記簿謄本など |
住居に関する書類 | 賃貸借契約書、固定資産税納税通知書など |
健康状態に関する書類 | 健康保険証、診察券、医師の診断書、障害者手帳など |
その他 | 公共料金の領収書、借金の明細など |
相談したいことのメモ | 聞きたいこと、不安な点などをまとめたもの |
相談当日は、これらの情報をもとにケースワーカーが状況を詳しく聞き取り、生活保護制度の説明や今後の手続きについて案内します。
申請から受給決定までの期間と審査内容
生活保護の申請を行うと、福祉事務所は原則として申請日から14日以内(特別な理由がある場合でも最長30日以内)に、保護を開始するかどうかを決定し、通知します。
この期間中に、申請内容が事実かどうかを確認するための審査が行われます。
具体的には、ケースワーカーによる家庭訪問、預貯金や生命保険などの資産調査、年金や就労収入などの収入調査、扶養義務者(親や子、兄弟姉妹など)への援助の可否を確認する照会、そして病状や働く能力についての調査などが実施されます。

審査って、どんなことを調べられるの?

ご提出いただいた書類の内容確認に加え、生活状況や収入・資産などを詳しく確認されます
審査の結果、生活保護の利用が決定されれば保護開始決定通知書が、利用できない場合は申請却下通知書が、それぞれ理由とともに書面で届きます。
受給中の収入申告や生活上のルール
生活保護の受給が決定した後も、いくつかのルールを守る必要があります。
特に重要なのは、毎月、収入(給料、年金、手当、仕送りなどすべて)の状況を正確に福祉事務所へ申告する義務です。
この収入申告に基づき、翌月の保護費が計算されます。
その他にも、ケースワーカーによる定期的な家庭訪問や面談、病状や世帯の状況に変化があった場合の報告、働く能力がある場合は就労に向けた活動(求職活動や就労指導への協力)などが求められます。
受給中の主なルール・義務 | 内容 |
---|---|
収入申告 | 毎月、世帯全ての収入を正確に申告 |
資産申告 | 保有する資産(預貯金・保険など)の状況を申告 |
生活状況の報告 | 世帯員の増減、転居、入院、就職など変化があった場合に報告 |
指導・指示への協力 | ケースワーカーからの生活や就労に関する指導・指示に従う |
就労活動 | 働く能力がある場合、求職活動や就労に向けた努力を行う |
これらのルールは、受給者が最低限度の生活を維持し、いずれ自立した生活を送れるようになるために設けられています。
ルールを守り、ケースワーカーと協力していくことが大切です。
よくある質問(FAQ)
- Qうつ病と診断されていますが、生活保護を申請できますか?
- A
はい、うつ病などの精神疾患を理由に働くことが難しい場合でも、生活保護を申請することは可能です。
ただし、病状によってどの程度就労が制限されるかを判断するために、医師の診断書が必要になる場合があります。
診断書があれば必ず受給できるわけではなく、収入や資産など他の条件も含めて総合的に審査されます。
まずは福祉事務所の窓口でご相談ください。
- Q貯金はいくらまでなら持っていても生活保護の条件に影響しませんか?
- A
保有が認められる預貯金の具体的な金額は、お住まいの自治体や世帯状況によって異なりますが、一般的にはその世帯の最低生活費の半分程度が目安とされています。
一時的な出費に備えるためのものであれば、これを超える場合でも認められる可能性もあります。
正確な基準については、申請時に福祉事務所へ正直に申告し、確認することが重要になります。
- Q地方在住で車がないと生活できません。車を持っていても申請は可能ですか?
- A
原則として車は資産とみなされ、売却して生活費に充てることが求められます。
しかし、通勤や通院、障がいのある家族の送迎、公共交通機関が乏しい地域での買い物など、生活維持に必要不可欠と判断された場合には、保有が認められることがあります。
ただし、高級車や処分価値の高い車は認められない可能性が高いでしょう。
まずは福祉事務所へ相談してみましょう。
- Q親族に生活保護の申請を知られたくありません。扶養照会は必ず行われますか?
- A
生活保護を申請すると、原則として親や子、兄弟姉妹などの扶養義務者に援助が可能かどうかの確認(扶養照会)が行われます。
しかし、DVや虐待などの経緯がある場合や、10年以上音信不通であるなど、照会が申請者の自立を妨げる可能性があると判断される特別な事情がある場合は、照会を行わない、または事前に相談できることがあります。
事情がある場合は、正直に福祉事務所へ伝えてください。
- Qもし生活保護の申請が認められなかった(却下された)場合、どうすればよいですか?
- A
申請が却下された場合は、その理由が書かれた通知書が届きます。
内容に納得がいかない場合は、通知を受け取った日の翌日から3か月以内であれば、都道府県知事に対して不服申し立て(審査請求)を行うことが可能です。
また、却下の理由によっては、状況を整えて再度申請することも考えられます。
まずは、却下の理由を福祉事務所に詳しく確認し、今後の対応について相談することをおすすめします。
- Q働ける状態ですが、なかなか仕事が見つかりません。この場合、生活保護は受けられないのでしょうか?
- A
働く能力がある方は、その能力を活用して収入を得る努力が求められます。
しかし、ハローワークなどを利用して積極的に求職活動を行っているにも関わらず、仕事が見つからない場合は、働く意思があると認められ、生活保護の対象となる可能性があります。
福祉事務所では就労支援も行っていますので、求職活動の状況を正直に伝え、相談を続けていくことが大切になります。
まとめ
この記事では、生活保護を受けるための具体的な条件について解説しました。
生活保護は、あなたの世帯収入が国が定める最低生活費を下回っていることが最も基本的な条件となります。
- 収入や資産、働く能力、親族からの援助などの総合的な審査
- 病気や持ち家など、個々の状況に応じた判断
- 年金や手当など、他の公的制度の活用が優先されること
生活保護の利用を考えている方は、ご自身の状況が条件に当てはまるか、まずはお住まいの地域の福祉事務所へ相談してみましょう。
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