賃貸で障子や襖が破れたとき、費用や手順で迷う方は多いのではないでしょうか。たとえば次のような悩みはありませんか?
- 入居者の過失と経年劣化の線引きがわからない
- 退去時に高額請求されないための進め方を知りたい
- DIYと業者依頼、どちらがいいか判断に迷う
本記事では、国土交通省ガイドラインに沿って、責任と費用の考え方を整理します。通常損耗と過失の違い、特約の注意点、判断フロー、費用相場、保険の使い方、連絡文面や手順まで、今日から実務で使える形でまとめました。
原状回復の基本ルールとガイドラインとは?
賃貸で起きやすい障子や襖の破れ・汚れの負担は、国土交通省「原状回復をめぐるガイドライン(再改訂版)」が基本となっています。ここを外すと、退去時や修繕の請求で揉めやすくなったりとトラブルのきっかけになってしまう恐れがあります。
原状回復の定義と負担の原則
原状回復とは、入居者の故意や不注意などによる損耗を元の状態に戻すことです。通常の使用で生じる消耗や経年劣化は貸主負担が原則で、入居者が適切に暮らしていた範囲の汚れや日焼けは含まれません。
一方で、明らかな過失や誤った使い方による破損は、入居者負担になりやすいです。耐用年数や残存価値も負担割合の判断材料になります。
障子・襖でよくある損耗と負担の考え方
障子や襖は素材の性質上、日焼けや軽い変色が起きやすく、これは通常損耗です。子どもの遊びや家具搬入での大穴、ペットの引っかき、タバコのヤニ、結露放置でのカビなどは、入居者負担と判断されやすい項目です。
襖は面積が広く、破れや汚れの程度によって張替えか交換かが分かれます。写真で状態を残し、入居時の記録と合わせて管理会社に相談しましょう。
特約の有効性と注意点
契約の特約で、原状回復の負担を広げるケースがあります。たとえば「退去時の障子・襖張替えは入居者負担」といった文言です。ただし、有効となるには明確性・合理性・具体性・自由意思が必要です。
- 抽象的で包括的な条文は無効と判断されやすい
- 相場を超える一律請求や一方的な免責は争点になりやすい
- 重要事項説明と書面の内容が一致しているかを確認する
- サイン前に具体例と費用感を必ず質問する
「通常損耗まで入居者負担」など不利な文言は、一度相談しましょう。
賃貸で障子が破れた時の判断フローと費用負担
原因を正しく分けられると、費用負担がすっきり整理できます。自己判断で進めていくより、最初の一歩を丁寧に進めるのがおすすめです。
ケース別負担割合の目安
目安であり、契約や損耗の程度、耐用年数、相場で変動します。
| ケース | 負担の考え方 | 備考 |
| 日焼け・軽微な変色 | 貸主負担 | 通常損耗・経年劣化 |
| 紙の自然なたるみ | 貸主負担 | 湿度・温度変化 |
| 子どもが破った大穴 | 借主負担 | 過失・不注意 |
| ペットの引っかき | 借主負担 | ペット可でも原則借主 |
| タバコのヤニ・臭い | 借主負担 | クリーニング・消臭費用 |
| 結露放置によるカビ | 借主負担 | 管理義務違反 |
| 作業中の業者の過失 | 業者負担 | 施工保険で対応あり |
| 紙が古く脆弱 | 貸主負担中心 | 残存価値考慮 |
火災保険・補償の使い方
入居時の火災保険に「借家人賠償」や「個人賠償」が付いていれば、過失による破損が対象になることがあります。経年劣化は対象外が一般的です。免責や必要書類(見積・請求書・写真・原因報告)を確認し、管理会社の了承を得てから保険会社へ連絡するとスムーズです。
管理会社への通知と許可の取り方
無断でのDIYや交換は、基準から外れて指摘される恐れがあります。状況・原因・応急処置の有無、見積や業者情報、材料と日程、費用案を先に共有し、合意を文面で残すと安心です。
費用相場と見積もりの取り方

相場観があれば過剰請求を避けやすく、比較もしやすくなります。地域やサイズ、紙のグレードで単価は変動します。
障子・襖の張替え費用相場と単価
一般的な目安です。
| 建具 | 相場の目安 | 備考 |
| 障子(標準紙) | 1枚 2,000〜5,000円 | 強化紙は+1,000〜3,000円 |
| 障子(強化紙) | 1枚 3,500〜8,000円 | 破れにくい紙 |
| 襖(片面) | 1枚 3,000〜10,000円 | 柄・ランクで変動 |
| 網戸(参考) | 1枚 2,500〜5,000円 | 網のグレードで変動 |
| 畳表替え(参考) | 1枚 5,000〜12,000円 | 素材差が大きい |
最終金額は見積比較で確定させましょう。
DIYと業者の比較
DIYはコストを抑えやすい一方、仕上がりや責任のリスクがあります。業者は費用は上がりますが、短時間で安定した仕上がりが期待できます。許可を得た上で、自分の時間・技量・再施工リスクを考えて選びましょう。
枚数・材料費・工賃の見積内訳
見積で見るべき点は、紙の種類やグレード、枚数とサイズ、工賃単価、出張費、廃材処分、枠の補修などの追加条件です。合計だけでなく単価の根拠まで確認すると、負担割合の合意がスムーズです。
見積・請求時の確認と記録
- Before/Afterの写真を日付入りで保存
- 契約書・特約・重要事項説明の該当箇所をマーク
- 許可内容(材料・日程・負担割合)をメールで残す
- 領収書の宛名・内訳・枚数・単価を確認
張替えの手順と実務
原状回復は「正しい手順」と「事前承諾」でつまずきを減らせます。あとからのやり直しは、時間も費用もかかります。
DIY手順
- 準備紙:(障子紙/襖紙)、糊、刷毛、カッター、定規、霧吹き、ヘラ、マスキングテープ
- 取り外し:建具を外し、平らな場所に置く
- 旧紙の除去:糊を湿らせて丁寧に剥がす
- 下地清掃: ほこり・糊残りを除去し乾燥
- 貼付け:中央から外へ空気を抜き密着
- 仕上げ:余分をカット、乾燥時のたるみに注意
- 記録: 前後写真を撮り、管理会社へ報告
失敗しやすいポイントと対策
- たるみ・しわ
対策:中央から外へ圧着し、温湿度を安定させる
- 枠の歪みで浮く
対策:枠の補修が必要な場合は業者に相談
- 切り口がガタつく
対策:新品刃と定規で一気にカット
- 無断施工
対策:事前の通知と承諾、材料品番の共有を徹底
退去時の清掃・原状回復チェックとトラブル回避
退去時は、確認・記録・合意の3点が肝心です。清掃や臭い対策も評価に関わります。
退去立会いでの確認ポイント
- 入居時写真と比較し、通常損耗か過失かを整理
- 障子・襖・網戸・クロス・床などを建具ごとに点検
- 請求根拠(相場・見積・単価・材料費・工賃・枚数)を提示してもらう
- ガイドラインと特約の該当箇所をその場で確認
- すぐに合意せず、一旦持ち帰り書面で再確認も可
清掃・消臭・カビ対策
障子や襖のまわりは湿気がこもりがちです。普段から換気・除湿・結露の拭き取りを習慣にしましょう。タバコの臭いはカーテンやクロスにも移るため、換気の徹底をおすすめします。また退去前の拭き上げと簡易クリーニングも有効です。
よくある質問Q&A
Q 小さな破れはシール補修で良い?
A 応急処置としては可能です。ただし退去時は張替えになる場合があるため、写真と通知を忘れずにしましょう。
Q 経年劣化なのに請求された
A ガイドラインと契約書を提示して再確認をしましょう。合意できなければ相場と写真を添えて再見積を依頼しましょう。
Q 強化紙へ変更できる?
A 管理会社の承諾があれば可能です。見た目が変わる場合は特に許可が必要です。
Q 交換と張替えの目安は?
A 枠の損傷が大きいなら交換、紙の損耗中心なら張替えが基本となります。
管理会社・オーナーとの交渉テンプレート
感情ではなく、事実と根拠で淡々と伝えるようにしましょう。
連絡文面テンプレ
件名 障子張替えの許可および費用負担のご相談
本文
- 物件名・部屋番号・氏名
- 破れの状況と原因、発生日(写真添付)
- 希望する対応(張替え/材料/希望日程)
- 見積書の提出と負担割合の相談
- ガイドライン・契約書の該当箇所確認のお願い
- 連絡先と返信希望日時
負担割合の合意書のポイント
- 損耗の原因と範囲、対象建具と枚数
- 材料種類、単価、工賃、合計金額
- 負担割合、支払い方法と期日
- 施工日程、立会いの有無、写真提出
- 署名またはメール同意の保存
まとめ
賃貸の障子や襖の張替えは、まず原因の分類から始めます。日焼けや軽い変色などの通常損耗は貸主負担が原則で、子どもの不注意やペットの引っかき、タバコのヤニや結露放置のカビは入居者負担になりやすいです。特約の内容は明確性と合理性を必ず確認しましょう。実務では、写真での記録、早めの通知、見積比較、負担割合の事前合意がトラブルを減らします。DIYはコストを抑えられますが、許可を得てから慎重に進めると安心です。納得できない請求はガイドラインと記録を根拠に、落ち着いて再確認しましょう。

